自閉症診断

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自閉症の診断 はどのように行うのか? 診断基準と検査の方法とは?

公開日
更新日

 
執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社 とらうべ
 
 
自閉症の診断 はどのように行われるのでしょうか?
自閉症等発達障害の診断は、これまで専門家の間でも議論が多い分野でした。
こうした経緯もあってか、ごく最近、自閉症も診断の枠組みが大きく変わりました。最新の基準は2013年に公開されたので(2016年時点)、まだ新しい診断基準への移行がなされていることもあるでしょう。
 
 

自閉症の診断

 
米国精神医学会による『精神疾患の分類と診断の手引き』最新版DSM-5では、自閉症スペクトラム障害(あるいは自閉スペクトラム症;ASD)については「社会的コミュニケーション」と「常同行動の障害」が診断の指標となっています。
重症度はレベル1(軽度)から3(重度)まで設定されています。
 
診断にあたっては医学的検査や心理検査のほかにも現在ではスクリーニングが行われています。
ちなみに、約100人に1人と最近のASD患者数は増加傾向にあり、男性が女性より数倍多く、とくに正常知能群ではこの傾向がもっと顕著になっているとのこと。
 
また、診断閾値(ASDだと診断される程度)に達していない人も増加しているというのが、専門家の認識です。
 
 

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自閉症の診断 :基本3症状「3つ組のコア症状」

 
自閉症スペクトラム障害の重要な診断基準となるのが、「3つ組のコア症状」と呼ばれてきた以下の3つ、
「社会性の異常」「コミュニケーションの障害」「常同行動」です。
上に挙げたDSM-5では、コミュニケーションの障害を社会性の異常の一部とみなして統合し、「社会的コミュニケーション」と「常同行動の障害」が指標となっています。
 
 
<社会的コミュニケーションの障害>
典型的な症状として「親とも目を合わさない」「人が指をさした方を見ようとしない」「名前を呼んでもまるで耳が聞こえないかのように反応がない」などがあります。
それで、ご両親が「この子は感覚に障害があるのではないか」と誤解をしてしまったりといったことも少なからずあります。
 
また、同年代の子どもと遊ばず、独りでいることが多いなどの傾向もあります。
さらに、相手の気持ち(心)や場の状況を読むといったことも苦手で、他者との会話がかみ合わなかったり、場違いなふるまいを平然としているといった、「コミュニケーション下手」といった印象を与えてしまいます。
 
 
<常同行動の障害>
同じ行動をくりかえす所作、たとえば、同じコトバを何回も反復する、同じ動きをし続ける、一定の場所に留まって動かない、などが「常同行動」です。
かといって、こうした動きが機械的反復かというとそうではなくて、ある一つのおもちゃでいつまでも遊び続けるなど、「極端な興味の限定」という意味合いもあります。
 
ちなみに、天才的な発明家や芸術家などに、自閉症だった人は少なくありませんが、これも、突き詰めて行動できる、極端な集中力を持ち合わせているなど、常同行動が活かされた事例とも言えるでしょう。
 
 
<感覚の過敏さ、運動のぎこちなさ>r
3つ組のコア症状のほかにも、よく見られる特徴として、ある種の光・音・臭いにすごく敏感や鈍感で、他の人が嫌がることが何でもなかったり、逆に、何でもないことを嫌がったりすることが指摘されています。
中には「人の声が苦手」「身体接触が怖い」といったこともあるので、コミュニケーション障害に至ったりするのかもしれません。
 
また、真直ぐな姿勢で座っていられない、片足立ちするとふらつくなどから、保育園で遊べない、学校での学習に支障があったりと、「軽微な運動の異常」も指摘されています。
 
ADHD(注意欠陥多動性障害)を合併していると、落ち着かなく歩き回る、貧乏ゆすりが絶えない、昼夜が乱れる、下痢や便秘をしやすいなどの、運動・身体障害も起こっていたりします。
 
 

自閉症の診断:重症度について

 
DSM-5では、自閉症スペクトラム障害には基本症状に関して「重症度水準」が定められています。
軽度のレベル1から重度のレベル3まであって、要約すると次のようになります。
 

    <レベル1(支援を要する)>

  • ・適切な支援がないと、社会的コミュニケーションの欠陥がめだった機能障害を引き起こす
  • ・行動の柔軟さのなさは、一つ以上の状況で機能することを妨げている

 

    <レベル2(十分な支援を要する)>

  • ・言語的および非言語的社会的コミュニケーション技能に著しい欠陥がある
  • ・行動の柔軟性のなさが、事情を知らない人にも明らかなほど高頻度に認められる

 

    <レベル3(非常に十分な支援を要する)>

  • ・社会的コミュニケーション技能の重篤な欠陥が、重篤な機能障害、対人的制限などをもたらしている
  • ・行動の柔軟性のなさや変化への対処の困難が極端で、あらゆる分野で機能が著しく妨げられている

 
 

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自閉症の診断:細かい違い

 
自閉症にはこれまで挙げた基本症状はじめ、さまざまな病態があります。主なものを挙げてみると次のように整理されます。
 
・社会性の異常・言語の異常・常同行動・感覚異常・発達遅滞・運動異常・運動機能発達障害・消化器系異常・睡眠障害・てんかん・その他の精神疾患の併存
 
こうした症状が、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発障害、自閉症スペクトラム障害のそれぞれで、程度や症状の有無が違っているという研究結果もあります。
ちなみにこの研究では、次のような結果が出ています。
 

    自閉症

  • ・社会性の異常(必須)
  • ・言語の異常(必須)
  • ・常同行動(必須)
  • ・感覚異常(90%以上)
  • ・発達遅滞(15~40%)
  • ・運動異常(60~80%)
  • ・運動機能発達障害(10%)
  • ・消化器系異常(45%)
  • ・睡眠障害(55%)
  • ・てんかん(10~60%)
  • ・その他の精神疾患の併存(70%)

 
 

    ASD

  • ・感覚異常(94%)
  • ・発達遅滞(15~40%)
  • ・運動異常(60~80%)
  • ・運動機能発達障害(5~10%)
  • ・消化器系異常(4~50%)
  • ・睡眠障害(50%)
  • ・てんかん(6~60%)
  • ・その他の精神疾患の併存(25~70%)

 
 

    アスペルガー症候群

  • ・社会性の異常(必須)
  • ・常同行動(必須)
  • ・感覚異常(80%)
  • ・発達遅滞(?)
  • ・運動異常(60%)
  • ・運動機能発達障害(?)
  • ・消化器系異常(4%)
  • ・睡眠障害(5~10%)
  • ・てんかん(0~5%)
  • ・その他の精神疾患の併存(60%)

 
(大隅典子『脳からみた自閉症』講談社ブルーバックス、2016年から引用)
 
 
このように、それぞれ症状が微妙に違っていて、いわば「個性」があり、心筋梗塞や糖尿病などと同じように「自閉症」という病気があるわけではありません。
あえて言えば、「生活習慣病」に相当するような包括的な概念、それが「自閉症」ということができるでしょう。
 
 

自閉症の診断:検査と問診

 
自閉症スペクトラム障害の診断にあたっては、まず、さまざまな検査が行われます。
 
 
<医学的検査>
頭部CT、MRI(磁気共鳴画像)、脳波検査などが行われます。
自閉症が脳の機能障害であるとの立場から、こうした検査は実施されますが、脳腫瘍など脳の器質疾患の除外には重要なものの、今のところこれらによって自閉症スペクトラム障害を特定することができないという見解です。
 
 
<心理検査>
各種知能検査はじめ認知能力の測定検査が行われます。
知能検査は「知的障害(発達遅滞)」の有無に、認知能力検査は「認知特性の理解」に有効とされていますが、医学的検査同様、これだけでASDを確定することはできないとされています。
 
 
<スクリーニング検査>
幼児を対象としたM-CHAT(modified-checklist for autism in toddlers:乳幼児自閉症セルフ診断テスト)、知的な遅れがない成人対象のAQ-J(Autism-Spectrum Quotient Japanese version:自閉症スペクトラム指数)、全年齢を対象としたPARS(pervasive developmental disorders autism society Japan rating scare:パーズ、広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度)といった、さまざまなスクリーニングテストも行われています。
 
 
問診については診断確定のために、本人や家族・教員など関係者から、とくに幼少期の観察情報を収集することが重要だとされています。
またもちろん、アイコンタクトや呼名反応など、直接の行動観察も診断の確定に重要な要因です。
 
 

自閉症の診断:現場の実状

 
2013年に最新基準が示され、広汎性発達障害という用語が自閉症スペクトラム障害に再編されたり、アスペルガー障害を含む下位分類が撤廃されたり、コアとなる3つの特徴が二つに統合されたり、ASDとADHDとの併存障害が認められたりといった、これまでとは大きな変化があったので、とくに臨床現場では、従来のやり方がまだ残っていたり、場合によってはしばらくのあいだ混乱もあるかもしれないと専門家は指摘しています。
 
それでも、新しい基準に沿って診断や治療は行われていくような機運にあると思われます。整備にしばらく時間を要するということでしょう。
 
 

自閉症の診断 まとめ

 

  • ・自閉症の診断基準の一つに、基本的な症状がある
  • ・それは、社会的コミュニケーションの障害、社会性の異常、常同行動である
  • ・そのほかにも感覚や運動能力の過敏さや障害も重要な指標となっている
  • ・症状の多様性があって、自閉症はじめアスペルガーやASDも共通する部分と違っている部分とがある。自閉症とは多様な障害の集合体である
  • ・DSM-5では、重症度も規定されている
  • ・診断にあたっては、医学的検査、心理検査、スクリーニングなどが実施される
  • ・周囲の人による過去の観察情報(問診)や現在の行動観察も非常に重要となる
  • ・DSM-5の診断基準が新しくなったので、診断の現場ではまだ混乱が残っていると指摘する専門家もいる

 
 
参考
『今日の精神疾患治療方針』医学書院、2013年
『精神神経疾患ビジュアルブック』学研、2015年
『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き』医学書院、2014年
大隅典子『脳からみた自閉症』講談社ブルーバックス、2016年
 
【自閉症】赤ちゃんの頃から特徴的な症状が…
自閉症の症状と特徴 -【自閉症の森】
 
 
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
 
<監修者プロフィール>
株式会社とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 
 

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